本屋や電子書店で、自己啓発本のタイトルを眺めるだけで、なぜか胸が重くなる。
「前向きに」
「もっと成功する」
「人生を変えよう」
そんな言葉が、自分にはつらく感じてしまうことはありませんか。
心が限界に近いとき、自己啓発本が「救い」ではなく「つらさ」になることがあります。
ページを開けない自分、読み進められない自分に、さらに落ち込んでしまうことも。
でもそれは、自分が弱いからでも、意識が低いからでもありません。
私自身、心が疲れ切っていた時期に、自己啓発本が読めなくなったひとりです。
この記事は…以下の内容を、無理に前向きにならない視点で綴っていきます。
心が限界のとき、自己啓発本がつらく感じるのはなぜ?

まず、はっきりさせておきたいことがあります。
自己啓発本がしんどく感じるからといって、それは
「考え方が間違っている」とか
「努力が足りない」という話ではありません。
私自身、心がかなり疲れていた時期や、つらい現状をなんとかしたいと思うときほど、
「自分の何かを変えなきゃ」と思い、自己啓発本を手に取っていました。
でも、読めば読むほど苦しくなって、ページを閉じたあとに残ったのは
前向きさではなく、自己嫌悪と疲労感でした。
当時は理由がわからなかったけれど、今ならはっきり言えます。
それは、本の内容ではなく、心の状態とのタイミングの問題だったということです。
自己啓発本が効果を発揮する人・しない人の違い
ここまで読んで、
「じゃあ、自己啓発本が悪いわけじゃないってこと?」
そう感じた方もいるかもしれません。
私も、まさに同じことを考えていました。
苦しくなるたびに、
「この本が合わないのかな」
「いや、きっと自分の受け取り方が悪いんだ」
そんなふうに、頭の中でぐるぐる考えていたんです。
でも、少し落ち着いて振り返ってみて、ようやく気づいたことがありました。
自己啓発本は、
その人にとって力を発揮しやすいタイミングがある、ということです。
自己啓発本が向いているのは、
・考え方を整理できるエネルギーがあるとき
そんな状態のとき。
一方で、私がいちばん苦しかった頃は、
何かを変える前に、
まず「これ以上傷つかないこと」が必要な状態でした。
その違いに気づいたとき、
「読めなかった自分」を責める必要はなかったんだと、やっと思えたんです。
心が限界のときに自己啓発本が苦しくなる3つの理由

理由① 行動できない自分を責めてしまうから
自己啓発本を読んでいた頃の私は、
ページをめくるたびに、少しずつ気持ちが重くなっていきました。
「小さな一歩を踏み出そう」
「まずは行動してみよう」
書いてあることは、まっとうで、正しい。
それは頭ではよくわかっているんです。
でも、心や体がついてこない日もあります。
何かを始める気力が、どうしても湧かない日。
そんな状態のまま言葉を受け取ると、いつの間にか、
「できない自分」にばかり目が向いてしまいました。
行動できない理由があることよりも、
行動できない事実だけを見て、
「私は意志が弱いんだ」「向上心がない」と結論づけてしまう。
今思えば、
それは自分を奮い立たせるためではなく、
無意識に自分を追い詰めていただけだったんですよね。
理由② ポジティブな言葉に、少しずつ心が置いていかれるから
理由①で感じていたのは、
「行動できない自分」への小さな引っかかりでした。
それが続くうちに、
今度は言葉そのものが、少し重たく感じるようになってきます。
自己啓発本には、
「考え方を変えれば楽になる」
「前向きに捉えよう」
そんな言葉がたくさん並んでいます。
元気なときなら、その言葉に背中を押してもらえたと思います。
でも心が弱っているときは、
そのスピードについていけませんでした。
前向きな言葉が出てくるたびに、
「そう思えない自分」
「今はできそうもない自分」
が置いていかれる感じがして、
ページをめくるのが、だんだんつらくなっていったんです。
責められているわけじゃない。
否定されているわけでもない。
それでも、
「この本の言葉が届く場所に、自分はいない」
そんな距離を感じてしまいました。
気づかないうちに私は、前向きになれない自分を、またひとつ責める材料にしていたのだと思います。
理由③ 「変わること」を求められるから
今振り返って思うのは、
当時の私に必要だったのは「改善」ではなく「回復」でした。
・考え方を変える
・行動を変える
・習慣を整える
そんなふうに、何かを足すことが前提になります。
でも、心が限界に近いときは、もう足せる余裕が残っていません。
それなのに私は、
「もっと前向きにならなきゃ」
「ここを乗り越えなきゃ」と、
改善しよう、変わろうとし続けていました。
一方で、回復は少し違います。
何かを変えることでも、
何かを成し遂げることでもなく、
減らすこと・止まること・守ることから始まります。
・考えなくていい時間をつくる
・決断を先延ばしにする
・頑張らない自分を許す
本当は、そこからでよかったんです。
自己啓発本は、成功法則や思考法を紹介しています。
心が限界のとき、「もっと頑張れ」「こうしたほうがいい」と言われても、
心がついていけなくて、苦しくなっていました。
だから、回復が必要な状態のときに読むと、
「まだ何もできていない自分」だけが
浮き彫りになってしまうことがあります。
それは、本が冷たいからでも、自分が弱いからでもありません。
ただ、順番が違っていただけだと思いました。
この3つは、別々の問題ではありません。
心が少しずつ疲れていく中で、自然につながって起きていたことでした。
自己啓発本が合わないのは「あなたが弱いから」ではない

ここは、私がいちばん伝えたかったところです。
自己啓発本を読むのがつらい自分を、多くの人がこう思ってしまいます。
「こういう本が読めないのは、自分に向上心がないから」
「心が拒否するのは、成長したいという気持ちが弱いから」…。
私は実際、そう思っていました。
でも今なら、はっきり言えます。
合わなかったのは、
自分の心が壊れていたからでも、
努力が足りなかったからでもない。
ただ、今の状態と、その本の役割が違っていただけ。
自己啓発本には、「動ける前提」「考えられる前提」で書かれている言葉が多い。
だから、心が限界に近いときに読むと、言葉が届かないのは、とても自然なことです。
むしろ、
それでも何とかしようと本を開いた自分は、もう十分がんばっていたのですよね。
本にも、役目のタイミングがあります。
読めなかったこと、
途中で閉じたこと、
つらくなってしまったこと。
どれも、「自分がダメな証拠」にはなりません。
それは、
心がちゃんと限界を知らせてくれていたサインだったんだと思います。
心が限界のときに読むなら、自己啓発本より向いている本の特徴

気になるときだけ、見てもらえたらと思います。
頑張らなくていい…を味わえるエッセイ本
自己啓発本から少し距離を置いていた頃、
私が手に取っていたのは、
何かを学ぶための本ではありませんでした。
たとえば、角田光代さんのエッセイのように、
日常の出来事が淡々と綴られている本です。
「元気になろう」としなくても、
「前向きに考えよう」と言われることもない。
ただページを開いて、
数行読んで、閉じてもいい。
それくらいの距離感が、
当時の私にはちょうどよかったんだと思います。
▶『今日も一日きみを見てた』(角田光代)
気持ちを代弁してくれる本
心が弱っているときは、
自分の気持ちをうまく言葉にできませんでした。
そんなときに救われたのは、
「こう感じてしまうよね」と、
先に言葉にしてくれる文章でした。
その優しく寄り添って背中を押してくれる文調に、安心感をもって読むことができました。
この、きいさんの本は、
励ますというより、
隣で代弁してくれるような感覚があります。
何より、ずっと胸の奥にあった思いに、そっと名前をつけてもらえたようで、心が静かになりました。
▶『しんどい心にさようなら』(きい)
最後まで読まなくてもいい本
心が限界だった頃、長い文章を読むのがつらい日もありました。
そんなときに、意外と助けられたのが
詩集や短歌集、俳句の本です。
一編だけ読んで、閉じてもいい。
意味が全部わからなくてもいい。
感じられない日があっても、それでいい。
言葉の量が少ないぶん、
心に入ってくるときは、すっと入ってきました。
そしてその世界観に心が動いたときは、心の栄養になる感覚があったんです。
茨木のり子さんの詩は、
励ますでも、突き放すでもなく、
静かにこちらを信じてくれるような言葉です。
元気を出させようとしないのに、
読後に少し背筋が伸びる。
そんな不思議な距離感がありました。
▶『自分の感受性くらい』(茨木のり子)
元気が戻ったら、自己啓発本はまた違って読める

少し元気を取り戻したあと、
以前つらくて読めなかった自己啓発本を、もう一度開いたことがあります。
すると、不思議なことに、
同じ言葉が、前より心に入ってくるように感じられました。
それは、本が変わったわけではなく、
読む側の状態が変わっただけだったのだと思います。
心が限界のときは、前向きにならなくていい
何かを学ぼうとしなくていい。
無理に変わろうとしなくていい。
心が疲れているときは、
それだけで、もう十分にがんばっています。
まずは、
「今はそういう時期なんだ」と、自分に許可を出すこと。
立ち止まることも、
本を閉じることも、
本を読めないままにしておくことも、
回復に向かう、ちゃんとした一歩になりました。
これは正解でも、結論でもありません。
ただ、私自身が、いちばん楽になれた考え方です。

もし今、
「何かを学ぶ気力はないけれど、少しだけ気持ちを休ませたい」
そんな状態だったら、
こちらの記事👇も、必要なときに思い出してもらえたらうれしいです。


